最近、停電が気になりませんか?近年の、激甚化する気象災害(震災や、台風)や、相次ぐ電力会社からの節電要請。
千葉県で2019年に起きた台風15号による大規模停電は記憶に新しいのではないでしょうか。結局電気が復旧するまでに19日間掛かった地域もあったようです。
それらを教訓として防災用途にポータブル電源を用意する家庭も増えていると思います。
また、今屋根に載せている太陽光発電、卒FIT後、売電するくらいなら使ってしまった方がましだけど、昼間はそれほど電気を使わないし、太陽光で発電した電気の有効利用に家庭用蓄電池が気になってきた方もいるかと思います。
もしくは、SOHOとしてネットワークサーバーの運用やデスクトップPCの保護だけでなく、防災時も長時間使えるUPSが欲しい方、さらに週末はキャンプを楽しんでいて、大容量の電源が欲しいと思っている方。
その様な安心・安全+楽しみを全部まとめて叶えてしまおうというジャンルの家庭用電源がありました。
今回、最新のポータブル電源、BLUETTI AC300+B300とソーラーパネルPV350を使わせて頂く機会をもらえましたので、早速レビューしていきたいと思います。
開梱の儀|巷のポータブル電源を凌駕する大きさ
開梱して中身を並べてみました。
まず最初に見てに思ったのが、とてつもなくデカく、重いと言うことです。
参考に私の所有するAnkerのポータブル電源と並べてみました。
この大きさ、遠近法ですか?と言うくらいの差があります。
もはやポータブル電源と言うジャンルでいいのでしょうか。家庭用蓄電池と言う方がしっくりくるような大きさではあります。
ちなみにソーラーパネルもAnker の60W出力の物を横に置いてみました。
Ankerのソーラーパネルは発電性能が60Wと大したことないのもありますが、おもちゃに見えてきますね。
内容物はこの様な感じです。
ケーブル類と、何やら立派な箱。
開けてみると、LAAF PROGRAMなるアフリカ支援プログラム協賛のトロフィーが入っていました。かなりしっかりした高級感のあるトロフィーです。
早速ポータブル電源を組んでみました。BLUETTI AC300+B300は電源制御部分とバッテリー部分が分割されており、2つで1つのシステムとして作動します。
そのため、上下を繋ぐための付属のケーブルがあるんですが、ものすごい存在感です。
直径2cm、長さ110cmのケーブルが使われており、設置時にはこのケーブルの取り回しが気になりそうです。実際本体とは別にケーブルのために45cmほどのスペースが必要となります。
上のユニットは、主に電源の入出力用で、AC100V×6口、特殊形状コンセントが1口、DC出力として、USB type-c(100V)×1、USBーA(18W×2、15W×2)のほか、タッチパネルの制御画面があります。
側面には入力ポート、上からAC、DC、一番下は通信ポートとなっています。
右側にはバッテリーとの接続ポートが2つ
タッチパネルには、出入力状況が表示されています。
下のユニットはバッテリーユニットですが、単独でもAC・PV・カーチャージャーからの充電及び、DC出力(シガーソケット、USB-C(100W)、USB-A(18W))が可能となっています。
側面には左側、DC入力と、AC入力(7909入力ポート)、右側には制御ユニット・拡張バッテリーとの接続端子がついています。
早速使って試してみた
開梱とセッティングが済んだところで、早速ベランダ発電にチャレンジしてみます。
我が家のベランダは、南西向きで日光を遮るものが隣部屋との区画壁くらいしかないので発電環境としてはとても良いと思います。
今回設置できる箇所が、物干し竿の上くらいしかなかったため、その区画壁の真横に設置する形となり、午前中は影ができてしまいます。
午後になるとこの通り。
太陽光発電状況まとめ
この状態でまるまる一日置いておいた結果、我が家の環境で一日28%の充電をすることができました。晴天が続けば3日でほぼ満充電にできそうです。
製品が届いた時点で62%の充電状態で届きましたが、1日半で満充電にすることができました。
充電状況と、実験当日の発電量から算出した年間予想発電シミュレーションを行なった結果が下になります。
大体、年間21kWh程度(夜トク12プランの夜間電力を削減した場合の電気代換算で年間7,000円程度)の発電ができそうです。
また、考える人はいないと思いますが、せっかくなので、太陽光発電だけで製品代の元を取ろうとした場合の試算も行いました。パネル1setだと62年、2setで36年、、あまりソーラー充電だけで元を取るのは難しそうです。
防災用途で考える場合、バッテリー容量ももちろんなのですが、停電が長期化した場合ソーラー発電でどのくらいの電気を作れるのかが結構重要になってきます。
我が家の環境の場合は冬場の晴天で約1kWh(1,000Wの家電を1時間程度使えるくらい)、スマホやPCの充電にはかなり余裕がありますが、我が家の冬場の平均使用電力量は約30kWhなので、1/30程度の電力しか使えないことになりますね。当たり前ですが普通の生活を送ることは難しそうです。
テレビなら3時間程度、最新冷蔵庫であればギリギリ1日分程度でしょうか。余裕を見るのであれば、ソーラーパネルは2set(PV350x2=700W)くらいあったほうが安心かと思います。
ただし、我が家の様な環境ですと、パネル2セットは置く場所がないので、これは戸建てやマンション屋上階のような比較的ベランダにスペースのある場合に限ります。
負荷テスト状況
試しにどのくらいまで出力できるのか試してみました。
電子レンジ(1500W)、ドライヤー(1200W)、PC充電(100W)を一気に使ってみましたが問題なく動作しました。30A(3000W)まで使えるようですのでこのくらいは問題なくといった感じです。
また、満充電からどのくらいの電化製品を動かせるのかの確認ということで、全自動洗濯乾燥機に繋いで全自動コース(乾燥容量満タン程度)を試してみました。
途中で止まるもほぼ乾燥は済んでいました。(ギリギリOK判定)
間取りの関係上、写真は撮ってないのですが、今回はかなり高負荷なシチュエーションでしたので、洗濯量が少ない場合は最後まで持つのではと思います。
また、防災用途で考えた場合、ポータブル電源で乾燥まで回す人はまずいないかと思いますので、こんなことまでできてしまうよ、という参考例です。
使えそうなシーンの考察
ここまで実際に使ってきて、どんな方におすすめなのかをいくつか考えてみました。
まず、ポータブル電源として考えた場合、3,000kWhでできることをメーカーHPより載せました。
ポータブル電源としての用途としてよくあるのがキャンプやバンライフなどへの用途ですが、この機種は開梱時に記載した通り、上下に別れたユニットをつなぐケーブルの取り回しがかなり難しそうであること、また重量物の割にキャスターなどがついていないため、持ち運びに難があることからどちらかといえばアウトドアでの持ち出しというよりは室内分電盤近くに設置しておくような用途が適していると思いました。
そのように考えると、防災用途として、UPSとしてのSOHO向け(NAS、サーバー、デスクトップPCなどの保護)や、冷蔵庫・冷凍庫の保護などには十分適用できそうです。
もちろん個人宅のUPSとしても十分すぎるバッテリー容量があります。
他製品との比較(BLUETTI vs EcoFlow vs OMRON)
他製品との比較ですが、この製品はポータブル電源でもあり、太陽光発電用の家庭用蓄電池でもあり、簡易的なUPSでもあり、ポータブル電源として考えた場合とUPSとして考えた場合で評価が変わってくるかと思うので、2つの場合で比較をしてみました。
ポータブル電源として考えた場合
競合製品は、同じくBLUETTIのEP500とEcoFlow DELTA Proが容量・性能・蓄電池の種類(リン酸鉄リチウムイオン)で競合すると思います。参考に我が家のAnkerPowerHouse200も入れてみました。
ポータブル電源として見ると、持ち運びができることはそれなりにメリットと思いますので、EP500やEcoFlow DELTA Proあたりが使いやすそうです。
また、1kWhあたりの単価はEP500が最も安価となりました。
UPS機能はBLUETTIの2製品は本格的なUPS機能を備えているのに対し、EcoFlowとAnkerはパススルー充電方式となっており、これは充電しながら放電を短いサイクルで行うため電池寿命を早める可能性があることに注意が必要です。
BLUETTIのUPS機能のラインインタラクティブ方式は専用UPSに比べ切り替え時間が若干遅めではありますが、電圧変動に厳密なサーバー、ワークステーション、計測機器や、工場設備などへ使わなければ問題ない程度と思います。
今回実験として、TV視聴をしながら切り替え動作を行なってみましたが、AC300+B300、Anker PowerHouse200ともにテレビが切れること無く視聴を続けられました。
BLUETTI AC300+B300 | BLUETTI EP500 | EcoFlow DELTA Pro | Anker PowerHouse200 | |
---|---|---|---|---|
製品画像 | ||||
容量 | 3072Wh | 5100Wh | 3600Wh | 213Wh |
1kW単価 (参考) | 130,169 | 115,294 | 122,222 | 139,906 |
AC100V出力 | 30A | 20A | 60A | 1A |
重量 | 57kg | 76kg | 45kg | 2.7kg |
キャスター | × | ○ | ○ | × |
UPS機能 | ラインインタラクティブ方式(20msec対応) | 常時インバーター方式 (無瞬断) ラインインタラクティブ方式 (20msec対応) | EPS機能つきパススルー充電(30msec対応) | パススルー充電 |
UPSシャットダウン 信号対応 | × | × | × | × |
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ポータブル電源の比較表
UPSとして考えた場合
UPSとして考えた場合、UPSとして常用できるのは、本格UPS機能を備えたBLUETTIだけとなり、対抗製品として、UPSメーカーのOMRONの製品を考えてみました。
BLUETTI AC300+B300 | BLUETTI EP500 | OMRON BN300T | OMRON BU5002R | OMRON BU5002R+BUM5002R | |
---|---|---|---|---|---|
製品画像 | |||||
容量 | 3072Wh | 5100Wh | 12V 8.5Ah (2700Wで4.5分) | 12V 8.5Ah x 12個 (4500Wで5分) | 12V 8.5Ah増設 (4500Wで24分) |
保護時間(1000W) | 3h | 5h | 18m | 37m | 2h 36m |
1kW単価 (参考) | 130,169 | 115,294 | – | – | – |
AC100V出力 | 30A | 20A | 34A | 25A | 25A |
重量 | 57kg | 76kg | 39kg | 57kg | 57kg+84kg |
キャスター | × | ○ | × | × | × |
UPS機能 | ラインインタラクティブ方式(20msec対応) | 常時インバーター方式(無瞬断)、ラインインタラクティブ方式(20msec対応) | ラインインタラクティブ方式(10msec対応) | 常時インバーター方式(無瞬断) | 常時インバーター方式(無瞬断) |
UPSシャットダウン信号対応 | × | × | ○ | ○ | ○ |
太陽光発電連携機能 | ○ | ○ | × | × | × |
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UPSは停電発生時に、PCやサーバーが安全にシャットダウンできる時間として、せいぜい10分程度の稼働ができることを目的に設置されますので、バッテリー容量で単純に比較できないのですが、今回は出力が同等となる機種を選んでいます。
BLUETTIのEP500は常時インバーター方式(切り替え時無瞬断)に対応しているため、かなり本格的なUPSとしても使用できそうです。また、同じく常時インバーター方式のOMRONのUPSと比べても半額程度とコスパがかなりいいように感じられます。
一方、ラインインタラクティブ方式対応のAC300+B300と、OMRONのUPSとの比較では、若干高い程度。ただし保護時間が3時間<18分となっており、停電が続く時にもある程度稼働させたいという用途であればBLUETTIにメリットがある様に思います。
経済性考察
ここまで使えるシーンを考えてきましたが、実際のところ、30万円以上する高価な機器となりますので導入するにあたっては、ある程度のコストメリットも考慮する必要があります。
そこで、家庭用蓄電池として本格稼働させることで経済的なメリットを享受できないか考察を行いました。
以下のような条件で試算しました。
- 東京電力、夜トク12プランを契約
- 夜間安い電気で本体を充電し、昼間は優先的に蓄電池からの送電を行う
- 昼間:夜間の電気代使用量比率は、昼間1:夜間2程度の割合と考える。
- 本体及び蓄電池は20年間使えるものとする。ただし、蓄電池容量は10年(3500サイクル)で80%、20年(7000サイクル)で50%と試算。
- 上記にプラスして、昼間は太陽光発電を行い蓄電池に充電+放電を行った場合も試算する
試算結果は以下の通り。
B300一台 | B3002台 | B3003台 | B3004台 | |
---|---|---|---|---|
バッテリー容量 | 3,072Wh | 6,144Wh | 9,216Wh | 12,288Wh |
年間削減電力費 | 12,805 | 25,610 | 38,415 | 51,220 |
20年間total | 211,283 | 422,566 | 633,848 | 845,131 |
機器費 | 368,000 | 567,980 | 767,960 | 967,940 |
差引コスト | 156,717 | 145,414 | 134,112 | 122,809 |
経済的効果の期待できる 月使用量の目安 | 270kWh程度 | 540kWh程度 | 810kWh程度 | 1080kWh程度 |
経済的効果の期待できる 月電気代の目安 | 月1万円程度の家庭 | 月2万円程度の家庭 | 月3万円程度の家庭 | 月4万円程度の家庭 |
夜間電力充電運用を行なった場合の経済性確認(PVなし)
ソーラーパネルなしでは、20年間で15万円程度のトータル差引コストとなりました。
バッテリーを増やして運用した場合、4台にすると12万円程度の差引コストです。
これにプラスして、ソーラー充電を追加した場合のコストを試算しました。
ソーラー発電をした場合の蓄電池の年間削減電力費は、ソーラー発電分だけ減ったと仮定します。
(天候・使用状況により夜間の蓄電量は減らない可能性もありますが、そのパターンはあえて試算しません)
B300一台+PV350x2枚 | B3002台+PV350x2枚 | B3003台+PV350x2枚 | B3004台+PV350x2枚 | |
---|---|---|---|---|
バッテリー容量 | 3,072Wh | 6,144Wh | 9,216Wh | 12,288Wh |
夜間充電による年間削減電力費 | 8,637 | 21,442 | 34,247 | 47,052 |
20年間total | 142,506 | 353,789 | 565,071 | 776,354 |
機器費 | 368,000 | 567,980 | 767,960 | 967,940 |
PV出力 | 700W | 700W | 700W | 700W |
一日あたり発電量 | 約1.2kWh | 約1.2kWh | 約1.2kWh | 約1.2kWh |
年間発電量(kWh) | 419 | 419 | 419 | 419 |
年間削減電力費(PV) | 14,396 | 14,396 | 14,396 | 14,396 |
20年間total | 287,920 | 287,920 | 287,920 | 287,920 |
パネル費用 | 155,600 | 155,600 | 155,600 | 155,600 |
差引トータルコスト ※注釈1 | 93,174 | 81,871 | 70,569 | 59,266 |
経済的効果の期待できる月使用量の目安 | 300kWh程度 | 550kWh程度 | 840kWh程度 | 1100kWh程度 |
経済的効果の期待できる月電気代の目安 | 月1.1万円程度の家庭 | 月2.1万円程度の家庭 | 月3.1万円程度の家庭 | 月4.1万円程度の家庭 |
PV350のパネルを2セット使用した場合で、差引コストを10万円弱まで下げられそうです。また、さらに拡張バッテリーを追加するとさらに経済効果は高くなる傾向となりました。
※注釈1:差し引きトータルコスト = (バッテリ費用 ー 夜間充電による20年間の削減効果) + (パネル費用 ー 発電量による20年間での電力削減効果)
使ってみて気になった点
説明書の日本語が変
中国メーカーの日本法人が販売をしている関係上、説明書の日本語の構成がやや読みづらく分かりづらい箇所がいくつかありました。
これは今後日本で販売をしていく中で改善した方が良さそうだと思いました。
アプリやディスプレイの日本語が変な文章で分かりずらい。
下はアプリ画面なのですが、サービスタブを押すと、何もしてないのに「リクエストを提出しました」というボタンが出てきて一瞬びっくりします。
こういった細かい箇所のローカライズがまだされてないなぁと思うところです。
上下のユニットをつなぐケーブルの取り回し
これは上記でも述べていますが、ケーブルスペースにかなり取られますので、狭い日本の住宅や、車の中に入れようとした時、かなり邪魔になるポイントかなと思いました。
ケーブルレスの上下端子脱着式にするとか、もっと柔らかいケーブルにするとかL型コネクタにするとか改善が望まれます。
まとめ
これまで考察をしてきましたが、BLUETTI AC300+B300は、ポータブル電源というカテゴリーに分類されてはいますが、その性能・蓄電量・拡張性・大きさ・重さなどはもはやポータブル電源というより、家庭用蓄電池やUPSの部類に入ると考えてもいい本格電源装置と思いました。
以上より、以下のような方は検討の価値ありと考えます。
上記コストダウン対策を行うことで、使い方にもよるが、最大で20年間のコスト(機器費ー得した電気代)を10万円程度まで下げることが理論上は可能となります。年間換算すると、5千円程度と考えられ、これを保険料として高いと見るか安いと見るかが判断材料かなと思います。
※ただし、この場合は経済性を出すために、貯めた電気を毎日昼間に使い切ってしまう場合の試算ですので、UPS的に停電対策としての保護機能はだいぶ低くなります。
特に大型UPSを導入したいという場合の需要として考えるのであれば、同等製品とは値段に大差ないので、自動シャットダウン機能が不要であればいっそのことUPSとして導入するのはアリな気がしています。
この場合は一般的なUPSにはない機能として、太陽光発電との連携、夜間電力の有効利用による電気代の削減効果もある程度調整して得ることができそうです。
つまり太陽光発電と連携できる高性能のUPSが欲しい+電気代も節約したいと言うニーズがあれば十分魅力的な製品ではないでしょうか。
それでは、気になった方は是非チェックを!
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