スマートホームデバイスが増えてくると、色々と悩ましい問題も増えていきます。
設置場所、電源の取り方、オートメーションの作る場所。
その中でも取り分け面倒くさいと言いますか、使いやすさにも絡んでくるところが、スマートアプリの使い分けなんじゃないかと思います。
照明はPhilis Hueアプリを使って、テレビはNatureRemoアプリ、エアコンはSwitchBot、オートメーションはAlexa、掃除機はGoogle Homeのような感じで、家中のスマートデバイスを操作できるのは便利なのですが、とはいえアプリを複数使い分けるのは確かに面倒です。
そんな乱立するスマートホームの規格がいよいよ統一化されるかも?と2022年から注目され始めているスマートホームの新しい共通規格「Matter」がいよいよ本格化する兆しが出てきましたので、今回は「Matter」について、詳しく調べてみましたので、こちらについて解説していきたいと思います。
Matterとは何か?|スマートホーム共通規格
そもそもMatterの生い立ちから簡単に説明しますが、元々の発端としては乱立するスマートホームがどうにかならないかというニーズは随分昔から出ており、2019年にConnected Home over IP(CHIP)という標準化から始まりました。
参加幹事には、スマートスピーカーのメーカーでもあったAmazon、Google、Appleに加えて、Zigbeeアライアンスも合流し、本格的にスマートホーム向けの共通規格を機運が高まっていましたね。
当サイトでも当時CHIPについて記事を書いていましたね。

その後、Connected Home over IPの活動から、Googleの開発していたThread(802.15.4)をベースとして、Matterという規格が使用されることになりました。Threadについても簡単に調べてみましたが、要はZigbeeの物理層でも使用されているメッシュネットワークに特化した無線規格のようです。
と、ここまで聞くと結局また新しい無線規格が出てきたのかと思ってしまうのですが、Googleが公開している資料Matterは基本的にIPレイヤーの上で動作するように作られています。

つまりこれをみる限り、MatterはWi-FiでもThreadでも動作するというわけですね。
Bluetoothは、Provisioning(ペアリング)の時だけ使用できるとのことです。
更に802.15.4はZigbeeでも利用されているものなので、Matter over Zigbeeでも動作するものになっています。

つまり、今日現在スマートホームでよく利用されているほとんどの無線規格上でMatterは利用できるというわけですね。

Matterで便利になること
それでは、Matterの規格が導入されるとどうなるのか、もう少し踏み込んでみたいと思います。
1つのアプリで全てのスマートホームデバイスが操作可能になるかも
今日現在のスマートホームアプリとブリッジ、デバイスの関係を簡単に書いてみるとおそらくこんな感じになるかと思います。
スマホにそれぞれのハブに対応したアプリをインストールして、照明を操作するときにはPhilips Hueアプリを、鍵を操作する際にはSwitchBotを、そしてテレビを操作するときにはまた別のアプリのような感じですね。

これがMatterが本格的に導入されると、1つのアプリから、自宅内のスマートホームデバイスを横断的に操作でき可能性があります。

SwitchBotやIKEAのハブデバイスはMatter Controllerとしては動作することはなさそうで、あくまでも自社デバイスをMatter対応するだけ(Matter Controllerとの接続が可能になる)になりそうです。
ローカル接続できるのでインターネット未接続でも操作可能
次の点としては、スマホからのデバイスを操作する部分になります。
現在のスマートホームデバイスのほとんどは、スマホにアプリをインストールして、そのアプリからクラウド側にアクセスして、クラウド側からスマートホームデバイスを操作するという仕組みになっています。
この仕組みだと、気になるのが遅延の問題と、インターネット接続の部分です。
我が家でもインターネットの調子が悪くなると、家の中のスマートホームデバイスのほとんどが利用できなくなるという事態に結構頻繁に遭遇しています。

これがMatterにどうなるかというと、Matter対応のアプリはそれ自体がMatterコントローラーとして動作することになります。そのため、インターネット未接続だったとしても、Matter対応のスマートホームデバイスである限りは、ローカルネットワークの範囲において、デバイス操作が可能になるというわけです。

因みにこの仕組みは、現在のApple Homekitのものとほぼ同じで、Homekitアプリから直接デバイスを操作する、もしくはiPad/Apple TV自体がハブデバイスとして動作するので、インターネット経由でハブデバイスにアクセスし、ハブからHomekitとしてデバイスを動作するやり方と同じようにMatterが動くようになるはずです。

個人的にはこの仕組みが凄い使いやすくて気に入っていたのですが、Homekit対応デバイスがAppleのMFi認証のハードルが高過ぎて全く普及することがなかったので、あまり使う機会がありませんでした。
もちろん当サイトでも一時期HomebridgeというHomekit用の開発SDKを使ったものを使っていましたが、メンテナンスなどの問題で徐々に使わなくなってしまっていましたね。
Homekitデバイス向けのAppleホームアプリでは、iPadもホームハブとして使用することができましたが、Matterコントローラーとして動作するのはAppleTVもしくはHomePod (Mini含む)だけということのようです。
出典:HomePod、HomePod mini、Apple TV、iPad をホームハブとして設定する
QRコード読み取りだけでデバイス登録が完結
今までのスマートホームデバイスの多くは、スマホアプリから連動させて登録させることが多かったかと思います。
Matterに関しても基本的には同じような感じになりますが、Homekitと同じように、Matterのデバイス登録方法はQRコードの読み込みを使って登録するような仕組みになるようです。

個人的には比較的に現時点でも簡単ですが、QRコード読み取りだけで設定が完結するのであれば、更に簡単で便利になりそうですよね。
因みにHomekitのQRコードと、Matterのコードに関しては互換性はないので、今後HomekitのQRコードはMatterのものに差し替えられていくのだと思います。
Matterで気になるところ
ここまで聞くと、Matterは凄い便利な規格になるんじゃないと期待してしまいますよね。
とはいえ、そのままこの規格が普及していくかどうかに関しては、いくつか懸念があるかと思います。
スマートホームデバイスの全機能がMatterに統合されるかは未知数
まずは最初の懸念になりますが、Matterというは新しい規格になり、更に業界横断的に使える仕組みになります。
これによって特にスマートデバイス向けのアプリを作成していたメーカーに関しては、単純に使用ユーザーを他の便利なアプリに奪われる結果になりかねません。
そのため、いくら「Matterに対応」と銘打ったアプリを出したとしても、メーカー側の思惑としてMatter対応部分の通信に関しては簡単な操作(オンオフのみ)だけで、もっと細かいデバイス操作に関しては自社アプリからしか操作できないなんてことも、起こりうるような気がします。
いくつかのメーカーは既に「ハブデバイスのみMatter対応する」宣言しているようなところもあるので、たとえMatter対応されたとしてもメーカー毎のハブデバイスだけは残ってしまうのかもしれませんね。
過去のスマートホームデバイスが対応するか不透明
Matterは、IPレイヤー上で動作することになりますから、仕組み上ソフトウェアアップデートのみで、今まで販売済みのスマートデバイスに関してもMatter対応することができるはずです。
実際Google Nestなどのデバイスは、今後ソフトウェアアップデートにより、Matter対応されることがわかっています。
おそらくハブ/ブリッジ系のデバイスに関しては今後Matter対応というのが当たり前になっていきそうな予感がしますが、最終的なエンドデバイス(照明など)に関しては、全てのデバイスがソフトウェアアップデートされて、Matterになるかというかなり疑問かなという感じです。
現実的にはハブデバイスがMatter+過去規格をサポートするようになり、差分の部分に関してはハブデバイスが吸収するような感じになるのだと思います。
スマートカメラがMatter対応になるのはもう少し先
またMatterの認定カテゴリは、記事執筆時点では以下の通りになっています。
Matter v1.0カテゴリ | 電球とスイッチ スマートプラグ スマートロック スマートブラインドとスマートシェード ガレージドアのコントローラー サーモスタット(温度調節装置) 空調システムのコントローラー |
ほぼほぼカバーしているように思えますが、スマートカメラやロボット掃除が含まれていないので、Matter v1.0の段階であると、やはり映像系のデバイスや、ルンバアプリなどは引き続き別でインストールが必要になりそうですね。
Matter対応デバイス
まだまだMatter対応のデバイスが多いわけではないのですが、わかった範囲+我が家にあるメーカーのデバイスを中心に確認してみたいと思います。
Googleデバイス | Wi-Fi ルーター: Google Nest Wifi Pro (Wi-Fi 6E) スピーカー: Google Home、Google Home Mini、Google Nest Mini、Google Nest Audio ディスプレイ: Google Nest Hub(第 1 世代)、Google Nest Hub(第 2 世代)、Google Nest Hub Max |
Appleデバイス | iOS 16.1からMatterに対応 |
Amazonデバイス | Echo Dot(5th Gen) Echo Dot(時計付き 5th Gen) Echo(4th Gen) Echo Dot(3rd Gen, 2018 release) Echo Studio Echo Show 8(2nd Gen, 2021 release) Echo Show 10(3rd Gen) Echo Show 5(2nd Gen, 2021 release) Echo Show 15 Echo Dot(時計付きGen 3) Echo Dot(時計付きGen 4) Echo Show 5 Echo(v3) Echo Dot Gen 4 Echo Input Echo Flex Echo Show 8 |
TP-Linkデバイス | Tapo L535(電球) Tapo L925-5(LEDテープ) Tapo P125M V1 (プラグ) コントロールハブ*(開発中) など |
Philips Hueデバイス | Philips Hue Bridge(ブリッジ) |
SwitchBotデバイス | SwitchBot Hub 2(赤外線リモコン) |
IKEAデバイス | DIRIGERA(ブリッジ) VINDSTYRKA(空気質モニター) |
わかるのはやはり、ハブ系のデバイスが中心にMatter対応になっていきそうですね。
既存のデバイスをMatter対応にするとなると、なかなかフォームアップデートができるのかという問題もありますから、そういう意味では一番効率が良い更新の仕方なのかもしれません。
まとめ
今回はおそらく2023年後半から主流になってくるであろうMatterについてできるだけ詳しく解説してみました。
基本的には、Matter対応デバイスを選ばない理由はないと言ったところかと思います。
ただスマートホームアプリという観点でみると、やはり照明操作には照明操作に特化したアプリ(UI)の方が使いやすかったりしますでの、単純になんでも繋がるということが全てにおいて利便性があるのようになるのかは未知数ですね。
そういう意味では今度は、アプリケーションの部分での差別化がよりメーカーには求められていくのかもしれませんね。
それではみなさんぜひ参考にしてみてください。
コメント
コメント一覧 (2件)
「MatterはWi-FiでもThreadでもBLEでも動作する」と書かれてますが、BLEはペアリングの時に使える(QRコードをカメラで読むほかにBLEでもペアリングできる)だけで、実際のMatter通信はWiFiとThreadだけで可能です。
なるほど!そういう仕様なんですね!
ご指摘ありがとうございます!